
滑舌の訓練には”朗読”がオススメ!1日15分の滑舌トレーニング
意外と知らない”朗読”の効果
「滑舌が悪い」と感じていても、どのように治せばよいか、
悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
特定の”行”が発音しにくい、舌がもつれてしまう…….
滑舌が悪い原因の目星がついているのであれば、
その原因を解消するトレーニングをおこなうのが効率が良いのですが、
どこが悪いのかわからない、なんとなく滑舌が悪いような気がする、
といった漠然とした不安を持っている方も少なくありません。
そのような人たちは、発音の癖や舌の筋肉によって、
本来のパフォーマンスを発揮できていないケースがほとんどです。
早口言葉や舌の運動も有効ではありますが、
一番良い方法は短めの文章を声に出して”朗読”をすることです。
大人になるとほとんど本を声に出して読むことはなくなってしまいますが、
”声に出して読む”ということには数多くのメリットがあります。
今回は、”朗読”による滑舌トレーニングのやり方やその効果についてまとめました。
そもそも朗読とは?音読との違いについて
「声を出して読む」意味の言葉に、音読と朗読という言葉がありますね。
この2つの違いについて考えたことはありますか?
音読と朗読の違いは、声により作品に描かれた情景や
登場人物の心情を表現しているか否か、という点にあるようです。
文部科学省の公式サイトには以下の記載がなされています。
「音読」は、黙読の対語(たいご)だから、声に出して読むことは広く「音読」である。
「音読」は、正確・明晰・流暢(正しく・はっきり・すらすら)を目標とする。
「朗読」は、正確・明晰・流暢に以下を加える。
ア 作品の価値を音声で表現すること
イ 作品の特性を音声で表現すること
(読者の受け止めた作者の意図・作品の意味・場面の雰囲気・登場人物の性格や心情を)
引用元:7 音読・朗読:文部科学省(2017/9/5現在)
正確にわかりやすく声に出して読むのが”音読”、
他人に聞かせるために読むのが”朗読”と捉えるとわかりやすいかもしれません。
朗読をすることによる7つのメリット
続いて朗読によって得られる利点について考えてみましょう。
「読むのが面倒臭い」という点を除けば、実はメリットしかないのです。
①語彙力が増える
声に出そうと出さまいと、文章を読むことになりますので、
自然と新しい単語や言語表現に出会うことができます。
それらの出会いにより語彙力が身につき、自分自身の表現の幅が広がります。
また語彙を増やすことによって、自分が発音しにくい言葉の代替表現を見つけられるかもしれません。
②会話のテーマに困らない
朗読する題材を日々変えていくことにより、新鮮な情報をインプットすることができます。
人との会話で雑談が苦手だという人は、新聞の記事や雑誌のコラム題材に選ぶことで話のネタを集めることができるでしょう。
③ストレス解消になる
よく「ストレス解消のため」と言ってカラオケに通っている人がいますが、
リズミカルな運動をすることによって、精神安定物質「セロトニン」が分泌されるため、
実はカラオケや楽器の演奏は科学的にもストレス解消に有効だと証明されています。
そうした音楽活動と同様に、朗読もセロトニンの分泌を助ける働きをします。
参考:誰でも実践出来るセロトニンを増やす8つの方法 | 快適.Life(2017/9/5現在)
④滑舌が良くなる
今回のテーマでもありますが、文章を声に出して読むことは舌や口の運動になるため、
滑舌を改善するには効果的です。
普段から声のトーンや、言葉を発する速度、滑舌について意識するだけでも変化があるものです。
⑤声の表現力が身につく
朗読を極めていくと、役者の方や声優さんのように声だけで微妙なニュアンスを表現したり、
演技によってコミュニケーションを円滑にしたりすることができます。
演技というと不誠実に聞こえてしまうかもしれませんが、
例えば「相手の話に興味をもっている」という姿勢を見せるにつけても、
ちょっとした相槌・声の調子の変化によって与える印象が大きく変わります。
そうした声の表現が上手になるというメリットもあります。
⑥自分の声に自信が持てる
自分の声が嫌い・自信がない方の多くが、そもそも自分の声を聞き慣れていないことが多いです。
朗読を行うときには、自分の声を録音して、相手にどのように聞こえているのかを振り返るとより効果的ですので、嫌というほど自分の声と向き合うことになります。
そうして自分の声に違和感を感じなくなってくれば、声や話し方に自信が持てるようになります。
⑦病気にも効果がある
音読は脳に刺激を与え、記憶や学習・感情を司る「前頭前野」を鍛えることにもなります。
脳の血流が増加し酸素が供給されるようになると認知症の予防やうつ症状の改善といった効果も期待されます。
また一般的に「どもり」と呼ばれる吃音症にも有効だと言われています。
参考:第9回「講義3 音読や計算がもたらす効果 脳を鍛える実践法」東北大学 加齢医学研究所 教授 川島隆太 氏|Science Portal
朗読による滑舌トレーニング
朗読トレーニングの手順〜魚住式メソッド〜
フリーアナウンサーの魚住さんが、会話のトレーニングとして
”朗読トレーニング”を推奨しており、そのメソッドがとても参考になるので、
ぜひ皆さんにやっていただきたいです。
魚住式メソッドの”朗読トレーニング”では、トレーニングが3つの要素に大別されます。
その要素とは、①黙読、②音読、③朗読の3つです。
①黙読
声に出して読む前のウォーミングアップです。
黙読をして、文章の全体像を把握し、物語や筆者の主張の意味を理解しましょう。
文意を理解しているのとしていないのとでは、読みやすさが違ってきます。
②音読
黙読をして内容を理解したら、声に出して読み始めます。
そのとき、さらに3つのことを意識しましょう。
強調したい箇所をマークする
文章を読む際に、一文一文に力を込めて読む必要はありません。
重要だと思われる部分を見極めて、その内容を確実に聞き手に伝えるつもりで読みましょう。
そのために、強調したい単語や文に印をつけて、滑舌良く読むための計画を立てます。
「抑揚」をつける
強調したい単語や文が決まったら、そこに「抑揚」をつけていきます。
「抑揚」とは、声に緩急をつけること、力を入れたり抜いたりすることです。
緩急がつくことにより、聞き取りやすさが増し、声に生気が宿ります。
魚住さん曰く、「抑揚」をつけるためには5つの方法とのことです。
1)高めの声を出す(前後を低い声にする)
2)前後に比べてゆっくりと話す
3)直前に軽くポーズ(間)をとる
4)強く発音する
5)声色をつける
引用元:魚住りえ『たった1日で声まで良くなる話し方の教科書』東洋経済新報社, P113.
全体の流れをつかむ
文章における段落ごとの役割を意識しながら、さらにメリハリをつけていきます。
例えば、結論を述べている段落はゆっくりと丁寧に読み、
話が転換する段落の前では少し間をあけるといった具合に場面に応じた読み方を考えます。
③朗読
音読によって決めた読み方を、抑揚や感情を乗せて実行しましょう。
録音をして自分の表現を見直しながら、都度改善を加えていくことが必要です。
この①黙読、②音読、③朗読(録音を聴く)の一連の流れを毎日2回繰り返しましょう。
録音した自分の朗読を客観的に振り返り、改善を加えることでより早いスピードで滑舌の改善がはかれます。文章の長さにも当然よってしまいますが、おおよそ15分で収まるはずです。
朗読にオススメの教材
古典や文学作品も朗読すると味わい深いものですが、
短時間で朗読をしたいのであれば、新聞の社説や短めのエッセイがオススメです。
勉強も兼ねて話し言葉に近い文体で書かれたビジネス書を読むのも良いですね。
新聞の社説
社説とは、各新聞社が掲載している解説記事のことです。
社説を読むことによって、文章の組み立て方を学ぶことができますし、
何より世の中で話題になっているものがわかります。
新聞社が異なればその視点も主張も違ってくるので、
読み比べてみるのも面白いかもしれませんね。
日経新聞(https://www.nikkei.com/news/editorial/)
毎日新聞(https://mainichi.jp/editorial/)
読売新聞(www.yomiuri.co.jp/editorial/)
朝日新聞デジタル(www.asahi.com/news/editorial.html)
朗読にオススメのエッセイ
自分の好きなものを読むのが一番です。
読みなれたもの、好きな作家の作品をとことん味わってみてはいかがでしょうか。
とはいえ、エッセイを読んだことがない方もいると思うので、
個人的な趣味ではありますが、オススメの作品を5つご紹介します。
・さくらももこ『もものかんづめ』集英社文庫
amazon→https://goo.gl/Sw8TAQ
言わずと知れた『ちびまるこちゃん』の作者、さくらももこ氏の初エッセイ。
小学生の頃図書室で読んだ方も多いのではないでしょうか?
筆者が子どものころのエピソードを面白おかしく語っています。
連作である『さるのこしかけ』『たいのおかしら』もオススメです。
・小林聡美『凛々乙女』幻冬社文庫
amazon→https://goo.gl/kbWGMg
女優である小林聡美氏のエッセイ集。
変わったエピソードを豊富に持っている筆者の赤裸々体験を綴った本です。
海外旅行での珍事件などを紹介することも多いので旅行好きの方は気に入るでしょう。
・森博嗣『つぶやきのクリーム』講談社文庫
amazon→https://goo.gl/FMiG7s
代表作『すべてがFになる』で一躍有名になった森博嗣氏のエッセイ。
工学博士である氏の観察力と思考法がとても勉強になる一冊といえます。
新しい着眼点を学びたい方は一読の価値ありです。
・原田宗典『あはははは』幻冬社文庫
amazon→https://goo.gl/Zb8DAU
小説や戯曲、エッセイで知られる原田宗典氏のエッセイ傑作選。
独特の語り口がクセになります。
文学にのめり込んでいた学生時代の筆者の経験が生々しく描かれており、
同じような境遇にあった人なら誰しもお腹をかかえて笑える本です。
・村上春樹『村上ラヂオ』新潮文庫
amazon→https://goo.gl/zt3E6e
ノーベル文学賞の有力候補者でもある村上春樹氏のエッセイです。
今回ご紹介したエッセイの中では一番文学的と言えるかもしれません。
一つの話がおよそ1ページで完結しているので朗読向きな一冊です。
コミュニケーション能力の向上にも役立つ
ボイストレーニングスクールなどでレッスンを受けると、
トレーニングの一環として、劇の台本などを朗読することがあります。
表面上は発声や滑舌の訓練ですが、先にお伝えした通り、
表現力を養うためのトレーニングでもあるのです。
そうした声による表現力を身につけることで、
滑舌が悪くても”雰囲気”で相手に自分の意思を伝えることができるようになります。
これは一つのコミュニケーション能力ですね。
コミュニケーション能力に磨きををかけたい方にも、朗読はトレーニングとして有効です。
1日15分もあればできるものなので、この機会に習慣化してみてはいかがでしょうか?